2014年06月18日

ついっためもめも。

ついったーって脊髄反射でぽちぽち打ったりできるので止められません。
何日か前にぼそぼそ呟いていたのめもがてら。

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あんまり深く史実とか考えずに、王濬が大船団で長江を下って来た!「だがまだ手はある!」吾彦は川の底に鎖を沈めた!「くっくく若造が小癪な!」「な、なにい!」船団は物ともせず鎖を引きちぎった!みたいな気楽なの書いてみたい。(言うのはただ

吾彦「弓をもて!せめて一矢なりと!」って横切る船団に闇雲にはなった矢が王濬の頬をかすめるとかそういうお約束展開とか盛り込んだりとか。もえる。

王濬「フッ小童めが、やりよるな。しかし我が行く手を阻むことはできん、さらば…」って高笑いするのを聞きながら吾彦は我に返り歯を食いしばりながら後衛に伝令を走らせる、しかし、下る船の足に馬は追いつけないのだ…みたいな。

そういうオープニングもえるじゃないですか。一方その頃杜預は相変わらず馬に乗りあぐね、出立を今や遅しと待つ軍を目に溜息をついていたみたいな

「将軍、今や我が軍は意気盛ん、この時は益州を落とした時に勝るとも劣りませぬ、さ、号令を!」とかいってる空気読めない新人さんにどう復讐するかで悩み深まる杜預さんとか気の毒すぎる。輿を用意してあげてー!

杜預「ああ、益州戦か、あれは酷かった。こたびもあのような酷い目にはなるまいな…」直前まで、いや、まだ火は残っている状態をどうにか上が押さえ込んでいるほどに国論を二分したこの征戦の成否は誰にかかるのか。杜預は征戦の急先鋒ではなかったが、全軍の指揮を取らんとする賈充との

折り合いをどのように付ければ良いのか、未だ見定めることが叶わなかった。確かに益州戦は急先鋒二人の大将で危うく結果そのものが灰燼に帰するところだったが。かといって、その目を呉へ向けようともしなかったものが総大将ならいいと言うものではない。杜預は背後が気になって仕方がなかった。
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2013年02月27日

個人的にもえるために。

 ときどきついったーの診断で遊んだりします。
 先日、〜で始まるBL小説、っていうので、陳玄伯荀景倩って放り込んだら、「あっ…んんんっんん……!」で始まるBL小説書きます!って出てしまって目玉ポン。無理だよ、無理ゲーすぎるよ!いきなりすぎるよ!!
 あんまりに予想外すぎて…荀景倩ってすごくテンションが低いイメージだったので。万事やる気がないまでは行かないのですが。いや、そうか、そんな荀景倩も陳玄伯の前ではちょっと可愛げが出るということですか。
 すみません、この続きでとなると、「玄伯…また手を切ってしまった……。」「あー…舅どの、無理に包丁を持つ必要はないんですよ…?」っていう展開にしかならな……げふ。
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2012年12月25日

雪月夜。

 荀景倩と陳玄伯のなんでもないこねた。続きを読む
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2011年01月14日

無題。

「姜将軍は、帰りたいと考えたことはありませぬか。」

 夏侯仲権はある種の期待を持って問いを投げかけた。

「否。」

 返答は、即座に、そして強固さを以て返される。

「私には、帰るということが判らない。」

 それは、理解を拒んだ答えだった。
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2010年05月14日

4 翡翠(カワセミ)の羽が一つ

 数日続いた驟雨のあと、新緑はひどく陽に映えていた。

 吾士則は目を細めた。キッと甲高い声と共に、水辺から翡翠の羽が飛沫を上げる。



 滑らかな動きで矢を番えると、後ろから腕をとられた。



「折角、晴れたのだ。無粋な真似をするでない。」



 上官の気紛れには慣れていた。吾士則はあっさりと引き下がり、矢を収めた。



「静かですね。」

「風流が似合わぬと口答えはしないのか?」



 吾士則は聞き流すと、目で笑った。
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2010年04月21日

3 夕方の木漏れ日にさらされて

 甲高い音を響かせ、壺の中に矢が納まった。

 夏侯仲権は雑念を振り払うように、無心に矢を投げ続けていた。憤懣をひとつのせた矢は、次は壺から外れ、側面を叩いただけだった。



「優雅な趣味だ――。」



 日暮れを背に、男が一人近付いて来た。



「嫌味ですか。」

「いや、私の郷里では見ることが珍しかったから。」



 雅歌投壺と称されるように、士大夫の優雅な趣味であるそれは、姜伯約の育った辺境では見かけることは少なかった。



「私にとって矢とはこう使うものだからかな。」



 腰に手挟んだ弓を構え、矢を射ると、壺は粉々に砕け散った。



「一献いかがかな。」



 この男の不器用な児戯なのだといい加減知っていた。夏侯仲権は苦笑を溢すと立ち上がった。
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2010年03月06日

2 高貴な光を身に纏う

 夜が明ける。

 姜伯約は高揚と共に起き上がった。今日こそ忍従のときが報われるのだ。



 何のため、は彼にとっては自明のことだった。何故、という問いに対する答えを彼は持っていない。そもそも問うことすらなかったからだ。



 朝餉を取り、参内したとき、すべては始まるのだ。



「雲行きが余りよくないな、雪になるか。」



 ちらりと不吉な予感が脳裏を掠める。雪などもう何年見ていないのだ。

 この雪は吉となるか凶となるか。しかし、天候で吉凶を占うなどは愚かなことだと思い直す。少し神経過敏になっているようだった。普段なら気にも留めないようなことだ。

 母の形見となった翡翠の簪を髷に刺す。

 ――翡翠とは、死者の口に含むものだ、と思い至る。不吉な符号。



 頭をひとつ振る。

 己は間違ってはいない。



 冬の陰鬱な光を浴びながら、姜伯約は扉を開けた。栄光の為に。

 ――破滅の為に。
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2010年02月28日

1 木々の間を駆ける清流

 さらさらさら。

 荀文若は足を止めた。南へ下って行くと乾燥した空気からひどく湿気を含んだ空気へと変化していくのは大河のなせる業だろうか。思えば、北の大地は廻り歩いたが、黄河より南へ足を踏み入れたことがこの人生で幾たびあっただろうか。

 中華は広かった。中原しか知らぬ身、あるいはこの先も新しい世界が開けているかもしれぬと思うと心も躍る。どれほど大きな懸案だろうと、時に忘れることもまた良き哉。

 この身は澱みのように宮奥深く沈めて居ればよい、そう思い定めた日も遠い。

 快い風、青い空があったことさえ忘れていたのではないだろうか。

 大陸を駆け抜け続けた人間にとって、宮の暗さがどうにも耐えられず、放り出すように外へ飛び出していくことも致し方ないのかもしれない。そして今度は自分も。

 老いた、と思う。外を見るのはこれが最期かも知れない、そう思ったとき、巷間でどう噂されようと構わないから軍旅に従うことを強く望んだ。丞相が眉を顰め――あるいは持病の頭痛が出ていたのかもしれないが―暫し沈思したが、軽く頷いて見せたのも深くは考えていなかったのかもしれない。結局、我々の間でことを決するということは軽い出来事でしかなかった。風の便りに流された噂に自分も驚いたが、丞相はさらに心外だったかもしれない。

 さらさらさら。

 何もかも流れのように。

 さして当事者間では深刻なものなど何もないのだ。記号を読み取るのは周囲に任せるとしよう。

 さらさらさら。

 私は、ただ、この解放されたときが楽しく、とても愛おしいだけなのだ………。
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2010年02月25日

ヒスイ。

 またお題をぼつぼつ消化していこうかと。





== ヒスイ ==



 1 木々の間を駆ける清流

 2 高貴な光を身に纏う

 3 夕方の木漏れ日にさらされて

 4 翡翠(カワセミ)の羽が一つ

 5 願うは死者の再生と復活



Fantastic Girl様 URL: http://fantasticgirl.himegimi.jp/
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2010年01月03日

延煕八年、つづき。

 曹爽は焦っていた。己には太傅、司馬懿に匹敵する赫々たる武勲がない。その焦りに腹心のケ颺らが甘言を囁いたのだった。

 魏にとって蜀は小国であったが、度々の侵略に悩まされているのも事実だった。この小煩い僭称者を攻略できれば、その功は間違いなく司馬懿以上のものとなる。実権を奪ったとは云え、隠然たる勢力を朝廷内に持つ司馬懿の存在は、曹爽らにとっては脅威であった。何晏らが確固たる地場を作る為に、尚書として人材を集めているのも、ひとえに司馬懿への対抗の為だった。

 その陰惨な権力闘争の結果引き起こされた外征である。

 士気が低い訳ではなかったが、準備不足を早くも露呈し始め、行軍の先々で物資の調達を行うも充分とは云えず、不安を助長していた。

 調達といえば聞こえが良いが、要するに現住民からの収奪である。関中に住まう漢人のみならず、羌人、氐人らの人馬を酷使したことによって家畜たちが次々死に絶え、彼らは泣き叫ぶしかなかった。

 そして満を持して待ち受ける蜀軍と天嶮の興勢山を始めとする山嶺が立ちはだかった。



 戦いが長引くことはなかった。事を起こすは無謀であっても、利に敏い者がいない訳ではなかったらしい。姜維は陣が引き払われた跡に立った。

 犠牲が少なかったことは喜ぶべきことだ。否、完璧に敵を退けたのだ。それでも姜維は戦い足りないと感じていた。

 風に乗って悲壮な歌声が聞こえてきた。



 路に飢えたる婦人有りて

 子を抱きて草の間に棄つ

 顧みて号び泣く声を聞けど

 涕を揮ぎて独り還らず

 未だ身の死する処を知らず

 何ぞ能く両ながら相い完からん

 馬を駆りて之を棄てて去る……



 泣き叫ぶ声は、自らの糧とするべき家畜たちを奪われた怨嗟に充ちていた。それは漢人であろうと異人であろうと変わりはない。

 姜維の乗る馬に縋り付いてきた羌人の子供を振り払うことも出来なかった。



 夏四月朔、日食が起こる。

 それが暗示したのは、曹爽の没落であったのか、それとも、蜀の暗雲であったのか。
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2010年01月01日

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします!



新年更新ならぬ小話。延煕八年。





 閏月、漢中は軍馬の嘶きに満ちていた。昨年より蒋琬から漢中の守護を引き継いでいた鎮北将軍、王平の下知によるものだった。護軍の劉敏が与えられた五千の兵を率いて進発する。暫く遅れて参軍の杜祺も同数の兵を率いて向かうのは漢中の西北、漢水支流の畔に位置する興勢山だった。

 春二月、魏の大将軍、曹爽が総勢七万の兵を率いて長安を進発し、長安を拠点に先鋒は駱谷に入ったとの報が届いた。王平はその軍に対抗する為、山地を生かした陣を敷いたのである。既に、蜀軍本体の在る涪へ早馬を飛ばしているとは云え千里もの距離があった。援軍到着まで暫しの時が必要だった。同じく成都へも急報しているとは云え、こちらは更に遠かった。

 王平は、漢水を下り黄金谷へ布陣する為の精兵千余りの選抜に着手した。



 成都より仮節を与えられた録尚書事の費褘が進発したとの報が行軍中の姜維の元に届いた。大将軍をも前線へ出さねばならぬ程の危急の事態だった。

 鎮西大将軍と涼州刺史を兼ねる姜維はひとつ息を吸った。病がちの蒋琬に代わり、先鋒として漢中へと急行している道中、姜維は胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。夢にまで見た魏の本隊との戦いが始まろうとしていたのだから無理からぬことだった。

 これまで、一軍を率いて辺境を騒がせてきたが、中原を略するには未だ程遠い道程だった。姜維は、故諸葛亮の元でも最前線に立つことは少なく、主に兵站を担当していた。

 無論、後方支援を軽視するはずはない。しかし、彼が望んだ功は飽く迄戦場に立って得られるものだった。千載一遇の機会に多少の打算もないとは云えない。だが、彼は純粋に戦場へ立つことへの喜びで身体を満たしていた。
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2009年12月16日

いつかこの続きを書きたいな。

「琴を。琴を持って来い。」
 市場に引き出されてきた罪人は傲然とした態度を崩すことなく言ってのけた。刑吏達は鼻白んだが、相手は当世に名を轟かせた詩人であり、粗略に扱うわけにも行かず、風雅さの対極にあるこの場で琴を探さねばならなくなった。
「これをお使いなさい。」
 右往左往する刑吏たちの前に、琴がひとつ、差し出された。士人というには痩せた半白の髪の男だった。着ている服、冠の梁を見るまでもなく、朝歌に於ける高位の貴人と知れる。受け取った刑吏は、恭しい態度を崩さぬ程度には礼を心得てはいたが、彼が何者か知る筈もない。
 罪人が僅かに振り返り、貴人の姿を目に止めると、皮肉気に唇を歪めた。「腐儒が。」とその唇が動いたように見えたのは、貴人の思い違いだっただろうか。
 差し出された琴は、螺鈿を施された見事な造りのものだった。しかし、それが観賞用のものではなく、相当に使い込まれたものであることも、琴の第一人者でもあった罪人にははっきりと判った。
 この琴に何を沁み込ませたいのか、無念か、怨嗟か。しかし俺はお前とは違う。わが心に在るのは幽憤のみ。お前には決して理解のできぬ、それでいて近しい感情だ。
 手枷を外され、弦を爪弾く。どこか鈍い鈴のような音が響く。音を噛み締める様に二度三度、調律を確認していく。確かに、こまめに手入れは為されているらしい、直に澄んだ音に変化する。
 罪人はひとつ、深呼吸をすると、静かな曲を奏で始める。咎無くして死ぬ身を、最早嘆くことも無い。
 無心に爪弾かれるこの曲を、貴人は聞くことを望んでいた。それが断末魔の淵に奏でられる絶叫でも構わなかった。名が伝わるばかりの秘曲を聴くためだけに、自分はこの場に来たのだと。必ず、かの罪人はこの曲を弾くことを判っていたのだ。
 それを知りつつ、奏でる罪人の心中はとても静かなものだった。波立たせるものはひとつも無い。心置きなど、元から持っていなかった。ふと我が子の顔が横切ったがそれも一瞬だった。放蕩の父など忘れるがいい。清澄な音の中で真っ先に心に描いたのは、お前でなく自分の兄だったのだから。自身を投影させるほど近しかったのは兄だったのだから。
 この兄弟の交情を、理解できるのか、お前に。
 想いの矛先は貴人へと向けられる。忠を忘れ、見せ掛けの孝を尽くす滑稽な男。己の肉親同様、憂憤の心を抱くことも無く、保身に生きる唯の抜け殻。
 しかし、その心中の罵倒も、何時しか細波に洗われ元の清澄な世界へと還って行く。
 曲は徐々に激しさを隠した仮面をかなぐり捨て、怒濤の如く音を刻み始める。喜怒も無く、悲哀も無く、唯あるのは無為の世界に横たわる荒涼とした大地ばかりだった。音自身に感情など無い、音に哀調を感じるのはその人自身が哀しいからだ――、自らの唱えた論に従うならば、今自分の心中は荒野にあるのかと問うことも忘れた。その大地に吹き荒ぶ嵐を只管、奏でることに没頭していく。
 自分はここへと戻っていくのだ。四海の彼方にある筈の、遠い彼岸の世界は自分をどう迎え入れるだろうか。数少ない交流のあった友人たちの顔が浮かび、また泡の如く消え去る。自分が先に玄妙の世界に到達することを、嗚呼、君は喜んでくれるだろうか。
 そして、自らが奏でた最後の音で我に返った。
 市場は、物音ひとつしなかった、……ように感じられていたが、実際は我関せず、と日常の慌しさに埋れるままに駆けずり回る、民草の姿があった。それこそ、在るがままの自然だった。誰もが、自分の生を支えるのが精一杯の世界に、何を求めて死に臨んだ曲を聴く酔狂な者がいるだろうか。
 そのことに思い当たり、罪人はひどく可笑しさを感じた。
 背後で、騒がしさが一層増す。そして、金物の磨れる音が響いた。
 罪人の目には、もう、琴を貸した貴人の姿も、猥雑な市場も、唯一振りを待つ刑吏の姿も、映ってはいなかった。映るのは、どこまでも青く広がる空ばかり。そう、空と云うものがこれほど澄んだ蒼をしていたことを、自分は随分長い間忘れていたのだ。それは、自らも汚濁の中に居たが故なのか、理由を問うことは無かった。美しいものは美しいと、そう、信じていれば良かったのかも知れぬ。



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ケイ康と荀景倩。

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2009年08月23日

こねた。

「ときに、二刻ほど前に至急で回したはずの書簡がもどってこないが、ご存じないか。」
「そのような自明のことを聞きにわざわざお越しになりますか……。」
「む、では仕掛けに嵌らなかったのか…。」
「なかなか物騒ですね、杜殿。」
「さすがに三度その手にはかからぬか。また新しい方法を考えねば。」
「いえ、それより徐殿に引きずってきてもらうほうが早いですよ。ああ、ほら、あそこ。」
「………君たち仮にも上官を何だと思っているんだい。」
「「脱走兵。」」

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2009年08月21日

09// どうか 私を忘れて 下さい

 ほろほろほろと、琴を爪弾く。

 昔は明るいだけの音色だった。

 今は時折混ざるこの空虚。



 ほろほろほろ。



 眠れぬ深更、月が雲間に隠れては姿を現す、生温い風の中で。ほろほろほろと琴の音をを曲にならないままに空へと投げる。



 誰に届けるため?

 もう逢うことのない子供たち。生きているかどうかも知れぬまま。



 いえ、生きているなら。

 薄情な母のことなどお忘れなさい。私もお前たちを忘れるから。



 蔡文姫は、静かに琴を置いた。
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2009年08月19日

こねた。

「なあ、君、次この窓を横切る鳥の色を当ててみないか。いくら賭ける?」
「……こちらは我々二人の認可が必要だ、目を通してくれ。」
「あ、そういえば、さっきのおはじき、持って来たら良かったな。おはじきなら君もやるだろ?」
「いい加減にしろ!誰のせいでこんな深夜に書類仕事を片付けていると思っているんだ!」
「え?そりゃあ、私のせいだねえ。」
「ああ、ああ、そうだとも。書類が回ってこないことを不審にも思わず、賭場を開いて、夕刻になって手違いで重要書類、至急案などが別部署に山積していたんだ!つき合わされるこっちの身にもなれ!」
「こういう時こそ余裕が必要だよ。」
「夜明けまでにこの山を片すんだ!余裕もくそもあるか!」
「眉間の皺はいただけないなあ、姜君。」
「誰のせいでしょうね、費殿。」

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2009年08月16日

08// さようなら 私の「    」

「君、相変わらずつれないね。折角私が自慢の琴を聞かせているというのに。」

「貴方が勝手に上がりこんできて掻き鳴らしているだけでしょう。知ったことではない。」



 姜伯約は円窓に行儀悪く腰掛けながら一心に書を読んでいた。

 無趣味なこの男をからかうのが存外に楽しいらしく、趣味人の費文偉は何かと姜伯約の官舎に押しかけてちょっかいをかけていた。



 わざと音を外して見せると、竹簡が飛んできた。無趣味であっても無教養ではないらしい。



「そう、猫のようにいつまでも逆毛を立てることもあるまいに。」

「性格です。」



 直しようがない、と言外に含めたのだろうが、費文偉はそれを無視した。



「ところで明日の酒宴だが、いい場所がとれたぞ。」



 それを聞いた姜伯約が心底嫌な顔をした。華やかな席は好まないらしい。しかも、これまでの経験上、費文偉の「いい場所」とは妓楼のことと思ってほぼ間違いない。ふい、と視線をそらした。



「なあ、君。告げ忘れた言葉があったとしたら、それは告げるときではなかった、ということだよ。」



 費文偉は頑なな姜伯約の性格が、天水に残してきた家族ゆえだと考えていた。



「さよならを告げる必要はなかったのだよ。また、」

「………夢ですね。」

「そうだよ、我々は、夢霞を食って進むしかないのさ。」
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2009年08月14日

07// 旅立ちの時

 つい、一刻ほど前に拝礼して頂いた書簡を、今は私室で寝そべって読むともなく眺めていた。

 また、中央に出仕する気はないと云えば、輿を回してくるだろう。そんな恥は一度で充分だった。



 政に関心がないわけではない。しかし、時にどうしても全てを放り出したくなる気分があるからこそ、避けていた道だった。



 何かに倦んだわけでもないのに。逃げたいというこの欲求はどこから生まれてくるのか。頭の中身か、それとも身体か。



「悪くない暮らしをしていたのに。」



 ぼそりと恨み言のひとつでも吐いてよかろう。

 しかし、最早逃げることは許されない。そして、今度中央へ出たら、二度と戻れない引力を骨髄まで染み渡らせていた。



 羊叔子は、中領軍に属するため、地方官暮らしに終止符を打った。それは修羅の道の始まり。
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2009年08月13日

06// 恨んでも良い 憎んでも良い ただ泣かないで

 混乱のなか、別れの言葉も交わさず、今生の別離となった妻は今どうしているだろうか。



 ふと、母と共に思い出す面影は朧になっていく。しかし、己は確実に老いていくのに、その朧の彼女はいつまでも瑞々しい光のなかにいる。

 この歳まで妻帯しなかったのは、彼女への未練があったわけではなく、婚姻も政策の一環としてその歯車に組み込まれた自分を倦んでいたからだったと言う他はない。もっとも、このくにで異端の経歴を持つ己に嫁がせる酔狂もないだろうが。



 しかし、この歳になって、妻帯することになるとは予想外だった。



 月並みな幸せは保証できないと念を押したが、やってきた花嫁は一笑に付したのだ。

 月並みな幸せなど求めておらぬからここに来たのです、と。



 その意を深く追求することはなかった。



 ………恨んでいるだろうか。所詮、己は人を炎に巻き込むしかできぬ人間だったと。天水の妻に想いを馳せ、そして、この度も今生の別れを告げることのなかった妻に思う。
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2009年08月09日

05// 残されし者よ ただ貴方だけは どうか幸せになって

 守るという言葉の如何に脆きことか。



 帛に、否、或いは彼なら委細構わず袖を破り記したかも知れぬ――、走り書きされた擦れた墨を見て首を振った。彼は最期まで何を見ていたのだろうか、本当に信じていたのだろうか。未だ目の前にちらつく劫火を振り払うと、その炎をともに潜り抜けた近侍のものが不可思議な視線を投げかけた。



 沈んだ眼差し。ああ、ここは宴席であったな。

 殊更に声を立てて無邪気な笑顔の仮面をかぶる。



「いや、ここは楽しい。蜀土を思い出すこともありませぬな。」



 せめて、生き残ったものたちの安全を図るためならば、道化となろうと死に赴いたものは許すであろうか。それとも、すべては遅すぎたと侮蔑の眼差しを送るだろうか。

 朕の、いや、私の戦いはいま始まったばかりなのだ。





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リンク張替え、あーんどメールのお返事、少々遅れます。ごめんなさい…!!!<土下座。
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2009年07月14日

04// 全てを捨てても 未練が残る

「父上!黄殿が!父上!!」



 悲鳴のような息子の声が響き渡る。



 死に場所は、選べるものではない。死は常に強制される。今、ここで、綿竹の関がまさにその場だった。

 そして、自分に選択の余地はない。終に超えることの叶わなかった、否、それは不可能であったろう、その名声を汚さぬために。



 ………彼は何のために死地へと向かったのだろうか。彼の父は、今、目前にしている敵国で位を極めたと風の噂に聞くが…。

 そして、我が息子は。軽蔑しているのだろうか、この父を。



 降伏勧告の使者を斬り、出陣の太鼓が轟く。



「父子共に国家の大恩を受けながら、宦官一人を斬らなかったためにこのような辱めを受けることになろうとは…!」





 息子の歯軋りから漏れる言葉に耳を塞いだ。
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