2012年12月25日

雪月夜。

 荀景倩と陳玄伯のなんでもないこねた。
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 静寂のなか白い欠片が闇夜に吸い込まれていくのを眺めている。凍えた雲間にひどく明るい月が偶に光差す深更だった。
 勤めを終えた頃を見計らい、陳玄伯は今年出来たばかりの酒を手に舅を訪ねた。物静かな舅は柔らかな微笑と琴の音で彼を迎え入れ、二人で世俗から離れたお互いの父祖の郷里について物語しながら酒肴を楽しんでいた。
 部屋に火を入れたとはいえ、この季節の寒さは流石に堪えるようになってきた、などと舅が戯言を吐き出していた折に雪片が舞い降り始めたのだった。
 この分には、秦涼は既に真白であろうなと陳玄伯がぼんやり考えていると、舅が白い息を吹きかけ灯を消した。赤い熱は失われ、青い冷気が忍び込んで雪明りが二人を冷たく浮き上がらせる。
 舅は琴の残響を止め、束の間、無音に浸る。

「――やはり、雪は好きではないな。」

 あっさりとした独白に驚き、陳玄伯は顔を上げた。雪が舞い落ちる音を楽しんでいるものだとばかり思っていたのだ。舅の白い顔から表情が抜け落ちていた。

「何故です。」
「まるで葬送で埋め尽くされていくようで。」

 思えば、元々縁者の多かった舅の身辺は、年々寂しさを増していた。この歳になれば送るものばかり故の感慨なのだろう。陳玄伯が杯を更に勧めると、少しばかり彫像のような舅の表情も和らいだ。
 繰り返す季節のなか、自分たちの関係は変わらないと、まだ陳玄伯は信じることが出来た。
posted by みなと at 23:30| Comment(0) | くうのふたひ。こばなし
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