2010年04月21日

3 夕方の木漏れ日にさらされて

 甲高い音を響かせ、壺の中に矢が納まった。

 夏侯仲権は雑念を振り払うように、無心に矢を投げ続けていた。憤懣をひとつのせた矢は、次は壺から外れ、側面を叩いただけだった。



「優雅な趣味だ――。」



 日暮れを背に、男が一人近付いて来た。



「嫌味ですか。」

「いや、私の郷里では見ることが珍しかったから。」



 雅歌投壺と称されるように、士大夫の優雅な趣味であるそれは、姜伯約の育った辺境では見かけることは少なかった。



「私にとって矢とはこう使うものだからかな。」



 腰に手挟んだ弓を構え、矢を射ると、壺は粉々に砕け散った。



「一献いかがかな。」



 この男の不器用な児戯なのだといい加減知っていた。夏侯仲権は苦笑を溢すと立ち上がった。
posted by みなと at 21:01| Comment(0) | くうのふたひ。こばなし
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