2009年07月14日

04// 全てを捨てても 未練が残る

「父上!黄殿が!父上!!」



 悲鳴のような息子の声が響き渡る。



 死に場所は、選べるものではない。死は常に強制される。今、ここで、綿竹の関がまさにその場だった。

 そして、自分に選択の余地はない。終に超えることの叶わなかった、否、それは不可能であったろう、その名声を汚さぬために。



 ………彼は何のために死地へと向かったのだろうか。彼の父は、今、目前にしている敵国で位を極めたと風の噂に聞くが…。

 そして、我が息子は。軽蔑しているのだろうか、この父を。



 降伏勧告の使者を斬り、出陣の太鼓が轟く。



「父子共に国家の大恩を受けながら、宦官一人を斬らなかったためにこのような辱めを受けることになろうとは…!」





 息子の歯軋りから漏れる言葉に耳を塞いだ。
posted by みなと at 20:55| Comment(0) | くうのふたひ。こばなし
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